読まず嫌いを後悔した本

【連続投稿1185日目】

 

昨日、食事と読書は同じ、と言った内容で記事を書きました。読まず嫌いを後悔したことがあります。最近、「東大・京大で一番読まれた本」と書かれた帯のコピーがありますが、あまのじゃくな私にとっては最も手に取りたくない本です。

「思考の整理学」。2020年7月30日、享年96歳で死去した外山滋比古さんの代表的な著書です。

製造現場でよく使われる改善手法に5Sがあります。整理、整頓、清掃、清潔、躾。それぞれの頭文字を取って5Sと称しています。この中でも最初の2S「整理・整頓」は5Sのステップとして重要視されています。

 

整理とは、いるものといらないものを分けて、いらないものを捨てる。

整頓とは、いるものをすぐ取り出せる状態にする。

 

本書には、捨てる、忘れることで脳が新陳代謝されると書かれています。ただ、捨てるにしても、いるものといらないものを分ける基準がないと、いらないものは捨てられませんね。

思考も同じです。捨てていい、忘れていい考えの基準があいまいだったり、そもそも基準がなかったらどうですか。捨てられない、忘れられない。挙句の果てに脳が新陳代謝されない。思考が凝り固まってしまう。

その基準こそが、自分の価値観。これらに忠実に判断することが自然と「忘れる、捨てる」ことになってきます。

この他にも、受け身の知識偏重型教育から、自ら考えて行動する飛行機型への転換の重要性を説いています。37年経った今でも、何も状況が変わっていないのでは、と思わずにいられませんでした。著書で批判しているグライダー型人間の象徴でもある東大、京大で一番売れたという皮肉は置いておきます。

人と人との触媒やセレンディピティをもたらす「弱き紐帯」、つまりはサードプレイスの話。読書について、読んで終わりではなく、そこから自分なりに解釈して行動することを「汗のにおいのする思考」と表現して、その大切さを訴えています。

この本が出版されたのが1983年。37年前の事実に驚きます。上述した内容は現代でも全くそのまま通じる内容です。知識を定期的に棚卸することで新陳代謝し、新しい発想を生み出すための方法論として古典となっている理由がよくわかりました。おそらく現代ナイズされた内容にすれば「コロナ時代を生き抜く思考法」などといったタイトルで出版されてもおかしくはないでしょう。

つくづく、読まず嫌いを反省するとともに、後悔先に立たずを体感したエピソードでした。