監視されている、という圧力が蔓延した組織ほど、悲しいものはない。

【連続投稿311日目】

 

監視されているという心理的圧力のことを、哲学の世界では「パノプティコン」といいます。もとは、演習場に配置された独房と中心に配置された監視所からなる刑務所のことです。

 

ja.wikipedia.org

 

これを、実社会、経営に置き換えるとどうなるか。最近よい事例を見つけました。

 

1月24日金曜日の日経新聞朝刊「私の履歴書」です。今月は日本証券業協会会長で大和証券社長を務めた鈴木茂晴氏です。

金曜日は、鈴木氏が社長就任後、支店改革に乗り出すという内容でした。改革のひとつに全支店19時帰宅の指示を出します。

 

ところが、「社長が言い出してもどうせ長続きしないだろうから適当にやっておけ」、という支店が一部にはありました。そのような支店長には、人事部長から電話が入り「次の人事で異動候補になっていますよ」と告げたそうです。この話が社内に一気に広まり、全ての支店が19時帰宅となったとのことです。その後は18時半、18時と帰宅時間がどんどん早まっていったとのこと。働き方改革大和証券では10年以上前からやっている、と自負して記事は終わっています。

 

この記事の中で、人事部長が異動をちらつかせる行為。これこそがまさにパノプティコンですね。

実際に異動があるかどうかはわからない。しかし監視されているという心理的圧力を加えることで指示に従わせる。

 

改革を進める際のひとつの選択肢としてあってもよいとは思います。しかしパノプティコンはいずれ忖度になってしまいます。過度な忖度で飼いならされた組織からは、イノベーションなど生まれようがありません。

どうせこれを言っても無駄だよね、という空気が蔓延した組織ほど、悲しいものはありません。

 

誤解しないでほしいのは、決して大和証券や鈴木氏を批判しているわけではなく、行き過ぎた組織を見ている実体験から出た感想だということです。