平野啓一郎「日蝕」を読んで。

【連続投稿1629日目】

 

日蝕」(平野啓一郎 1998年)。在学中の平野啓一郎デビュー作にして芥川賞受賞作。15世紀フランス南部の村。異端審問、錬金術、両性具有を擬古文の文体で記述しています。

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もともとは「私とは何か 個人から分人へ」(講談社現代新書 2012年)で紹介されていたこの本。一神教のもとでは分人の概念はなく、あくまでも個人としてしか存在しない事例として「日蝕」が紹介されており、手に取った次第です。

 

不老不死に代表されるように、人は完全を求める性質がある。両極性があるものを合体させて完全を求める。それを月と太陽が重なる日蝕、魔女として火あぶりの刑で処刑される両性具有者、燃えている様子を見て神と繋がる瞬間。

人というのはいつの時代も変わらない。人間の業を救うのが宗教であるかもしれないが、一神教ゆえの危うさも示唆した一冊でした。小説というよりは哲学書として読んだ方が良いかもしれません。